表題番号:2024R-013 日付:2025/04/04
研究課題機械学習による砕屑物組成から構造場を推定する方法の提示
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 太田 亨
研究成果概要

研究では,文献調査によって島弧・陸弧・安定陸塊・衝突帯の化学組成データを,それぞれ100個ほど収集して,対数比変換の後にランダムフォレストにて判別分析を実行した.今回は,単純に誤分類率のみから判断して,判別モデルは特徴量を2,木の数を100とした.

まず,この収集データをRoser and Korsch (1986)が提唱したSiO2K2O/Na2O判別図に適用してみた.この結果,島弧,陸弧,安定陸塊の正答率はそれぞれ,86.6%43.8%63.9%であった.特に,陸弧と安定陸塊の正答率は50%程度なので,正誤半々という結果は,全く無意味な判定基準によるランダムな分類と同じであると言わざるを得ない.

一方,本研究で実行したランダムフォレストでは,島弧,陸弧,安定大陸,衝突帯の正答率はそれぞれ,90.0%94.6%98.1%85.7%であった.さらに,モデル構築に用いないでテスト用に残しておいたデータに適用したところ,その正答率は,島弧90.9%;陸弧91.4%;安定大陸95.1%;衝突帯90.9%であった.したがって,この判別モデルは過学習を起こしていないといえる.したがって,砕屑物の化学組成から構造場を推定する方法を高精度化するという本研究の目的を達成できた.

ただし,今回の結果でも,島弧と衝突帯の正答率は十分に高いとは言い難い状況であった.これは島弧と衝突帯のサンプル数が十分でなかったためである.事実,誤分類率変化を見ると,島弧と衝突帯は木の数100程度の段階から誤分類率が平坦になっていることがわかり,これは教師データ不足によって学習が停止していることを示している.したがって,サンプル数を増加した後の本研究にては,この問題も改善することが見込まれる.