表題番号:2024R-010
日付:2025/02/10
研究課題日本語・英語を使った形態素を共有する・共有しない形態隣接語による効果の検討
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | 文学学術院 文学部 | 教授 | 日野 泰志 |
- 研究成果概要
- 英語を使った語彙判断課題の成績に語の形態-意味対応の一貫性が効果を持つことが報告されている(Marelli & Amenta, 2018; Marelli, Amenta & Crepaldi, 2015; Siegelman, Rueckl, Lo, Kearns, Morris & Compton, 2022)。一方、Tachibana, Kida & Hino (2020, November)は、日本語を使って語の形態-意味対応の一貫性を操作した語彙判断課題を実施したところ、行動データに有意な一貫性効果を観察することができなかった。これらの研究では、一貫性を計算する際に使用した形態隣接語の種類が違っていた。そこで、本研究では、英語を対象とする語彙判断課題のデータ(Balota, Yap, Cortese, Hutchson, Kessler, Loftus, Neely, Nelson, Simpson & Treiman, 2007)を使って、形態隣接語の種類の違いが、形態-意味対応の一貫性効果にどのように影響するのかについて検討した。具体的には、文字追加隣接語、文字置換隣接語、文字削除隣接語を使って、別々に一貫性を計算し、この一貫性の値が語彙判断課題のデータを有意に説明する変数かどうかを重回帰分析を使って検討した。データ分析の結果、文字追加隣接語から計算した一貫性による効果は観察されたものの、文字置換隣接語と文字削除隣接語から計算した一貫性は、有意な効果を示さなかった。文字追加隣接語は、ターゲット語と形態素を共有する可能性が高い(e.g., CHIAR, CHIARS)。そこで、英語の形態素データベース(Sánchez-Gutiérrez, Mailhot, Deacon & Wilson, 2018)を使って、これらの形態隣接語をターゲット語と形態素を共有する語・共有しない語に分類した上で、これらを予測変数に加えた重回帰分析を行った。その結果、ターゲット語と形態素を共有する形態隣接語が多い程、ターゲット語に対する語彙判断の成績が高くなる、形態素ファミリーによる効果が確認された。一方、形態素を共有しない文字追加形態隣接語はターゲット語の語彙判断に抑制効果を示したのに対して、形態素を共有しない文字置換隣接語は、ターゲット語の語彙判断に促進効果を示すことが明らかとなった。