表題番号:2024R-006 日付:2025/03/07
研究課題「女児ルイサ失踪事件」(1908年キューバ)における「人種」言説の編成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 岩村 健二郎
研究成果概要
 本研究は、広く現代の「人種主義」を構成する問題を、差異の認識と概念が生み出す近代の思考方法の一例として包括的に捉え、その時間的、空間的位相を相対化しようとする試みの一環としてある。とりわけ「人種」が医学や人類学といった「科学」において考察されるようになっていく18世紀以降の言説構成と、「民族」や「文化」といった他の近代の差異の概念との相関関係を分析し、特定個別の事例の中からそれを相対化しようとするものである。対象とするのは1908年にキューバのマタンサス県アラクラネスで起こった「女児ルイサ失踪事件」を構成した言説である。研究を実施するにあたって、当時の新聞記事、裁判記録、学術論文などの一次資料を「発掘」、追跡し読解分析することが必須である。そのためには多数の学術研究者や官公庁職員と接触を持ち、資料の所在を突き止める作業が不可欠になる。 2024年12月10日、11日開催のキューバ、フアン・マリネーヨ文化研究所の国際シンポジウム『第九回  社会的不平等の研究のための理論と方法』において、研究発表「19世紀キューバにおける奴隷の医療と文化的表象」を行い、加えて心理・社会学研究センター研究員、キューバ国際政治研究所所員、ICAPアフリカ委員会委員、在野の社会運動員などと会合を持ち、学術的コンサルテーション含め資料追跡のための情報収集を行い、一次資料に基づいた実証的な本研究の可能性を広げることができた。