表題番号:2024Q-021 日付:2025/03/29
研究課題人口減少・ダブルケア社会の高層福祉施設での「順次・優先・介助避難」バランスの検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 佐野 友紀
研究成果概要
本研究は、ダブルケアに象徴される人口減少・少子高齢社会に対応した地震時・火災時における中高層建築物の社会福祉施設での災害時要援護者の「順次避難」「優先避難」「介助避難」のバランスを考えた避難計画を検討し、諸外国に先駆け、国際的に実効性のあるマニュアルを作成するものである。成果として、2024年8月27日に2000人を収容できる劇場(J:COMホール八王子)において、一般市民を対象とした避難訓練調査を実施した。この訓練は平日日中に行われたこともあり、高齢者が多数参加した。これらの高齢者は高層階からの階段を自力で降りる際に、足が痛むなどの原因により、歩行速度が遅くなることが計測される。また、車いす避難者について、実測調査およびシミュレーションを用いて避難方法を検討した。結果として、一定数以上の車いす利用者がいる場合、避難に利用する非常用エレベータ前で滞留が発生し、他の避難者の流動を妨げ、避難完了時間が延長することがきらかになった。このように避難訓練の状況を調査することで、高齢者および車いす利用者の避難訓練実態の把握と、避難計画の検討を行えた。
この研究を通して申請した、2025年度科学研究費基盤研究(C)「人口急減社会におけるアクティブ/フレイルシニアのための国際火災地震避難安全計画」が採択された。
また、科学研究費の課題について、国際共同研究としての継続性の確保するため、Lund UniversityのEnrico Ronchi准教授らとともに、新たな国際的なファンド(FORTE)への申請を行った。今回は採択には至らなかったが、審査結果では高いランクの評価を受けたため、次年度、再度投稿することとなった。これらの成果は、本研究助成ににより達成できたものと考える。