表題番号:2024Q-015 日付:2025/03/19
研究課題高品質GaAsN系超格子の成長と励起子に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 牧本 俊樹
研究成果概要
[1] GaAsNの光学特性
 フォトルミネッセンス(PL)法を用いて、BeドープGaAsNに関する光学特性の成長温度依存性を評価した。その結果、480℃で成長したGaAsNにおいて、PL発光強度が最大となった。480℃よりも低い温度で成長したGaAsNでは、成長中の原子の表面拡散が十分でないために、結晶品質が悪くなる。一方で、480℃よりも高い温度で成長したGaAsNでは、Be不純物の活性化率が低下する。このため、不活性となったBe原子が非発光再結合センターとして働くので、PL発光強度が減少する。以上のことから、480℃で成長したBeドープGaAsNの発光強度が最大になったものと考えられる。今後は、発光強度の強いPLスペクトルを得るために、ドーピングする不純物などを変更してGaAsNを成長して、その光学特性を評価する。 

[2] GaAsNの電気的特性
 低温で成長したSiドープGaAsNを高温でアニールすることにより、SiドープGaAsN中の電子濃度が減少する。このようなSiドープGaAsNに対して、電子濃度の測定温度依存性を評価することにより、深い準位のドナーが存在することを明らかにした。このドナー準位の深さは、高温で成長したSiドープGaAsNで観測される深い準位のドナーの深さと同程度であった。以上のことから、この深い準位のドナーはGaAsN固有の欠陥である可能性が高い。この深い準位のドナーはPL特性などの光学特性に影響を及ぼす可能性が高いので、さらに詳細な検討が必要である。 

[3] GaAs/GaAsN 超格子の光伝導度特性
 GaAs/GaAsN超格子に対して光伝導度測定を行ったところ、GaAsN中の電子の量子準位に関連する光伝導度スペクトルを得ることに成功した。今後は、PL発光特性や光吸収特性などの光学特性と比較することにより、励起子に関する情報を解析する必要がある。