研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 教授 | 山田 章一 |
- 研究成果概要
本特定課題研究は、申請者が独自に考案した、高速自転する星の平衡形状を、そのゆっくりとした進化シークエンスも扱えるよう、ラグランジ形式で定式化し、数値的に計算するコードを用い、自転する白色矮星や原始中性子星の永年進化を計算しようとする科研費用プロジェクトに連動したものである。本年度主に取り組んだのは以下の点である。
⑴非相対論版コードへの拡散方程式の実装
⑵高速自転する白色矮星の冷却計算
⑶高速自転する原始中性子星におけるニュートリノ輸送と物質対流の計算
具体的には、
⑴上述のコードは、回転星の進化におけるスナップショットごとの平衡形状を与えるものにすぎない。実際の進化は、核融合による物質組成の進化と輻射輸送による熱の再分配、乱流粘性や対流による角運動量の輸送により起こる。これらは、平衡形状の上で各物理量の輸送を拡散近似で解くことにより考慮する。今年度はその実装を行った。
⑵上述の輻射輸送を拡散近似で実装したコードを白色矮星に適用するため、局所的なニュートリノ冷却と現実的な状態方程式を加え、試験的に冷却計算を行い、球対称の場合にオープンソースコードMESAの計算結果と定量的な比較をした。コードは基本的に期待通り動き、結果もMESAの結果とよく一致したが、時折イテレーションが収束しない場合もあり、現在この点の改良を行なっている。
⑶高速自転する原始中性子星の永年進化を定量的に計算するため、今年度はまずある時刻のスナップショットとして得られた回転平衡形状の物質分布を固定し、その上でニュートリノ輸送をボルツマンコードで計算し、その非球対称度合いと、それによる重力波放出、ニュートリノ振動の可能性、さらには対流不安定性が起こる領域をなどを定量的に調べた。特に対流については、この結果をもとに、次年度以降流体計算を行い、対流による角運動量、エントロピー、レプトン数の輸送をモデル化することを目指す。