表題番号:2024Q-001 日付:2025/11/05
研究課題国境炭素価格の制度設計とCO2排出削減効果:水素エネルギーを含めた総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 教授 有村 俊秀
(連携研究者) 政経 DC2研究員 Aline Morhta
研究成果概要
カーボンリーケージに対する懸念に対処するため、欧州連合(EU)は国境炭素調整メカニズム(CBAM)の導入を発表した。本研究では、2014年の貿易データを用いて、構造グラビティモデルを適用し、CBAMが厚生、生産、輸出、排出量に与える影響をシミュレーションしている。また、この政策の導入により最も影響を受けると予想されたアジア太平洋地域の国別結果も示している。その結果、CBAMは厚生にはほとんど影響を与えないものの、輸出の減少に寄与することがわかり、-0.29%(金属製品)から-1.49%(鉄鋼製品)の間で推定された。特に、中所得国がこの政策の影響を最も受け、これらの国はEUへの輸出を大幅に減らす傾向があることも明らかになった。また、EUの経済圏では生産量(とそれに伴う排出量)にリバウンド効果が起こることも確認された。輸送活動からの排出を含めると、CBAMが2014年に導入されていれば、大幅な排出削減させることになり、そのほとんどが輸出削減によるものであることがわかった。
 なお、水素については、EUCBAMの対象となり、その重要性が示された。しかし、水素貿易は経済分析の対象となるほどは行われておらず、今後の課題となる。