表題番号:2024N-006 日付:2025/04/04
研究課題平均曲率流方程式の解の時間大域的挙動
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 小池 茂昭
(連携研究者) 神戸大学 教授 石井克幸
(連携研究者) 群馬大学 准教授 大塚岳
研究成果概要

本研究は、平均曲率流方程式の障害問題における解の時間周期的挙動を解析することを目的としている。

障害物のない平均曲率流方程式の解の等高面は、空間二次元の場合、だんだん小さくなり漸近的に小さな円になり消滅することが知られている。一方、動かない障害物がある場合、等高面は障害物に巻きつくと考えられる。しかし、巻きつかないように障害物を動かした場合、様々な現象が起こることが、共同研究者の大塚岳(群馬大学准教授)の数値実験で確認された。

平均曲率流方程式は非発散型準線形放物型方程式であり、準線形方程式の時間周期問題は、半線形と異なり非線形部分を小さな摂動とみなすことができないため、研究がほとんどされていない。更に、障害問題を扱うため、完全非線形方程式として記述され、エネルギー法などの既存の手法は使えない。一方、既に、代表者と石井克幸氏(神戸大学教授)との平均曲率流方程式の障害問題の弱解(粘性解)のアプリオリ評価は得られている(2017年)。

これらの結果から、代表者・大塚岳氏・石井克幸氏との本プロジェクトの援助による研究打ち合わせを通して、粘性解理論の安定性を利用した時間周期解の存在を示す方法を開発した。これは、Barles-PerthameIshii-Koikeによる安定性解析を時間周期問題に初めて適応させた興味深い技法である。

一方、時間周期解の一意性に関しては既存の放物型方程式に関する技法が適応できず、未解決問題として残っている。これは、放物型方程式の一意性の技法の開発が遅れていたことに起因すると考えている。実際、関連研究である粘性解理論による非発散型1階偏微分方程式の時間周期解に関する数少ない研究結果を検証すると一意性に関しては結果がないことが確認できた。

 以上の研究は、論文や講演で発表していく。