表題番号:2024E-018 日付:2025/04/03
研究課題QE実施のための中央銀行による国債買い入れ市場のマイクロストラクチャーの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 講師 辻本 祐介
研究成果概要

量的緩和は非伝統的金融政策の一種であり、中央銀行が経済活動や金融市場に影響を与えることを目的として、主に長期国債などを買い入れる政策である。本研究の目的は、中央銀行が量的緩和を行う際に国債を買い入れる市場の詳細な構造(マイクロストラクチャー)を明らかにすることである。より具体的には、米国の中央銀行であるFedが、逆オークションを通じて仲介金融機関(プライマリー・ディーラー、以下PD)から米国債を買い入れる際の、個別オファーレベルのデータを用いて分析を行った。

本研究の新たな発見は、この市場においてPD、特に市場シェアの低いPDが、「Coarse Pricing(粗い価格付け)」と呼ばれる行動をとっていることである。さらに、本研究では、こうした粗い価格付けが「より細かな値付けに伴う情報コスト」によって生じていることを、詳細なクロスセクション分析により明らかにした。

これらの発見は、理論的な意義を持つだけでなく、Fedの国債調達コストに影響を及ぼし得る点で政策的にも重要である。本研究成果をまとめた論文は、マイクロストラクチャー分野で評価の高い学術誌である Journal of Financial Markets に2025年1月に受理された。