表題番号:2024E-012 日付:2025/04/04
研究課題ミオシンXIによる細胞骨格を介した葉の表皮細胞の形態形成機構の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 助手 橘 康平
研究成果概要

ミオシンXI-アクチン系は植物特有のダイナミックな細胞内輸送機構である原形質流動に関与することが知られている一方で、直接あるいは間接的に植物の姿勢制御や形態形成などさまざまな生理現象に関与することもわかってきている。ミオシン3重KOxi-1 xi-2 xi-k)株ではオルガネラ運動の低下や植物体サイズの低下に加えて、表皮細胞の形状の複雑性が失われることがわかっている。また申請者らは表皮細胞の微小管配向の乱れを見出した。先行研究では表皮細胞の正常な形態形成には微小管配向が重要であることがわかっている。したがって3重KOの表現形から、ミオシンXIがアクチンフィラメントの動体に影響を及ぼすことで、微小管配向と表皮細胞の形態形成を制御している可能性がある。

本申請では、ミオシン単独KO株、2重KO株の表皮細胞の形状を観察することで、3種類のミオシンXI遺伝子がそれぞれ表皮細胞の形態形成にどのような形で関与するのかを調べた。観察の結果、単独及び2重KO株の表皮細胞は野生型と比較して複雑性の変化は見られなかった。したがって3種類のミオシンXIは冗長的に表皮細胞の形態形成に関与すると考えられる。

また、これまでミオシンXI3重KO株にミオシンXI遺伝子を導入した相補株を用いた、表現形の回復実験は行われてこなかった。本申請では微小管マーカーの導入されたミオシンXI3重KO株をバックグラウンドとして、ミオシンRFPXI-K遺伝子を導入した株の作成を試みた。バックグラウンドの株に遺伝子導入を試みたところ、微小管マーカー遺伝子のサイレンシングが確認されたため、現在再度バックグラウンド株の作成を行っている。また作成した相補株にアクチンマーカーを導入して、両者の動体観察を行う予定であったが、継代を最小限にするためにアクチンマーカーは一過的に発現させることで観察を行う計画である。