表題番号:2024E-003
日付:2025/03/31
研究課題治安維持法体制研究―官庁・議会・国民の合意と治安協力について―
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 文学学術院 文化構想学部 | 助手 | 野間 龍一 |
- 研究成果概要
- 本研究では、治安維持法施行下の日本(1925~45年)で、議会・行政・国民が治安政策について合意・協力した過程を検討した。治安維持法は施行から廃止されるまでの20年間、日本本国・植民地における反体制派の摘発、および反戦・反軍運動の抑圧に猛威をふるったことで知られる。本研究では、まず戦後80年および法制定100年を迎えたことを理由に、これまで積み重ねられてきた膨大な研究の成果や論点を整理し、今後の研究上の課題を提示した。まず、先行研究では、法成立をもたらした政治的・外交的要因の解明、個々の事件や弾圧の実態解明などが行われてきたことを指摘した。そして、次に今後の研究上の課題として、①1930年代の議会・政党と法の関係性、②取締を支えた官僚組織、③府県レベルでの警察予算を承認することで、取締能力を支えていた府県会、の3点について解明する必要があることを指摘した。これ以降、本研究では、以上の課題に対して検討を行った。①については、1930年代の貴族院・衆議院における各党・各会派の意見の分析を行い、当時の衆院第一党が条文の解釈変更を通じて、取締の拡大を承認したことを指摘した。②については、ご遺族の許可の下、警察官僚・舘林三喜男の「日記」の分析を通じて検討した。これにより、戦時期における警察首脳部内の派閥、近衛新体制運動と官僚の関係性、極端な国粋主義に基づく取締の実施過程について明らかにできた。そして、③については、香川県会を対象に検討した。地域から選出された県議と警察当局の対立、そして県議が警察への協力に転じた過程を分析することで、当時の地域社会側の治安協力を考える手がかりをつかんだ。なお、本研究の推進中、NHKの番組取材を受けた際、本研究の実行過程で収集した警察関係資料を提供し、番組制作に協力した。