表題番号:2024C-771
日付:2025/04/01
研究課題大学と社会をつなぐリーダーシップ教育に関する実証研究:越境学習の視点から
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | グローバルエデュケーションセンター | 講師 | 片岡 亜紀子 |
- 研究成果概要
- 本研究は、「大学と社会をつなぐリーダーシップ教育に関する実証研究」をテーマに、リーダーシップ教育と越境学習との関係性を明らかにすることを目的としている。近年、リーダーシップ教育においては、知識の習得にとどまらず、実社会で必要とされる実践的なスキルや態度の育成が重視されつつある。中でも越境学習は、異なる価値観を持つ他者との相互作用や、未整備な状況における経験を通じて学習を深める点で、実社会の状況を踏まえ現代の教育において重要な意義を持つと考える。本年度は、石山(2018)の越境学習やWenger(1998)の実践共同体に関する理論、日向野のリーダーシップ研究、さらにサーバントリーダーシップやオーセンティックリーダーシップなどを参照し、リーダーシップ発達のメカニズムを理論的に整理した。越境学習に関する文献からは「サードプレイス的な特性」との関連性が見出され、Oldenburg(1989)の「中立性」「平等性」「会話」などの8要素に加え、Putnam(2000)の社会関係資本、Granovetter(1973)の弱い紐帯とも接続されることが確認された。これらの知見は、越境的な場が心理的安全や自発的参加の土壌となり、リーダーシップ形成の学習環境として機能しうることを示唆している。現段階では、理論的基盤の構築を通じて、今後の実証研究に向けた方向性と課題が明確になりつつある。年度内には、国内外の文献レビューを精力的に進めるとともに、仮説構築の基盤となる理論の選定や、リサーチデザインの可能性について検討を深めた。次年度は、仮説構築と調査設計を本格化させ、教育プログラム前後の変化を測定する縦断的な調査、大学や企業との連携によるフィールド確保、インタビュー調査の準備を進める。得られた知見は、学術的貢献にとどまらず、大学教育やキャリア支援の現場への実践的応用も視野に入れている。越境学習の特性がリーダーシップ教育にどう貢献するかを実証的に明らかにすることを目指す。