表題番号:2024C-766 日付:2025/03/23
研究課題生徒実験における事前予習動画視聴効果の測定
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 梅田 礼敬
研究成果概要
 高等学院の化学の授業では,年間スケジュールに沿って8回の実験を行っている。その内容および生徒に課す実験レポートは早大理工学部(特に化学系)への進学を見据えた高度なものである。一方,学習指導要領で定められた内容を授業で扱うにあたり,余裕のある単位数が配当されているとは言い難い。実験を行うには実験時間をとるだけでなく実験前後の解説等が必要となり,時間の兼ね合いが難しい。そこで,コロナ禍で大きく普及した動画配信を利用することで,実験前後の説明時間を短縮できないかと考え,その効果をある程度の定量性をもって測定することを試みた。
 今回は高校1年の2クラスに対し「グラフの書き方」をテーマにした動画を配信した。比較対象としてもう2クラスに対しては動画と同内容の授業を対面で実施した。提出されたレポート中のグラフについて,書くときの注意点7点が守られているかどうかを分析し,動画配信したクラスに対しては満足度や感想などのアンケートも行った。
 作成・配信した動画は7分弱のもので,生徒は都度一時停止してグラフを書きながら視聴をしたようである。一方,動画と同内容の授業を実施したところ35~45分程度を要した。提出されたグラフにおいて間違える箇所はクラスによってやや偏りが見られたが,注意点7点のうち1人あたりが間違える点数は動画視聴と対面授業の間の差は大きくなかった。どちらも7割程度の生徒がほとんど指摘箇所のない,良いグラフが書けていた。また,アンケートより,「授業で扱うより動画を見ながらのほうがグラフを正しく書けると思う(54%)」「動画を見ながらグラフを書いた方が効率がいい(75%)」「化学の実験前後の説明の一部を,動画で視聴する形態について肯定的な意見(80%)」と,コロナ禍の際にオンライン授業を経験している生徒たちにとっては,動画配信についての抵抗は大きくない様子が伺えた。現時点でのサンプル数は多くないが,実験前後の説明を動画配信で代替することによる心理的抵抗が大きくなく,成果物も対面授業で作成したものと同等のものができることがわかった。そのため,授業時間の少ない中で実験を行う際には,動画配信による授業時間の確保は有効な手段の一つとなりうると考えられる。