表題番号:2024C-759 日付:2025/05/07
研究課題中世立川流における舎利信仰の思想史的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 国際教養学部 教授 トレンソン スティーブン
研究成果概要

本研究では、中世日本の密教法流の一つである立川流における舎利信仰を再検討し、その思想史的意義を改めて評価することを目的とした。立川流は、12世紀初頭に醍醐寺法流の僧・仁寛によって関東地方において創始された日本密教の一派である。

1268年には、誓願房心定が著した『受法用心集』において、立川流のテキストとともに髑髏本尊儀礼の存在が言及されている。この髑髏は舎利の一種であり、密教、特に醍醐寺法流における真言密教の舎利宝珠信仰と深く関係し、またダキニ天や龍女との結び付きも指摘されている。

さらに、立川流の印信の一つである「舎利灌頂印信」には、醍醐寺法流の密教思想に見られる赤白二諦の概念が認められる。本研究では、筆者のこれまでの舎利宝珠信仰に関する研究成果を踏まえ、醍醐寺法流の密教から立川流の髑髏本尊儀礼(あるいは後世に立川流の儀礼とされた髑髏本儀礼)への影響、さらには「舎利灌頂印信」への思想的継承が確認された。

本報告の提出時点では、研究成果はなお整理・執筆中の段階であるが、今年度中に英文の国際学術雑誌にて公表される予定である。