表題番号:2024C-758
日付:2025/09/15
研究課題米中覇権競争時代の沖縄と台湾の地域レジリエンス安全保障研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 国際学術院 国際教養学部 | 教授 | 上杉 勇司 |
- 研究成果概要
- 台湾有事を想定し、自衛隊の南西シフトが進む。具体的にはどのような取り組みがなされているのか、そのような対策が地元との理解と協力を得て実現できているのか、の2点を中心に沖縄県および宮古島市での現地調査を実施した。台湾有事においては、想定される住民退避について、宮古島市の市役所の担当職員に対して聞き取り調査を実施した。また、自衛隊基地が設置され、訓練施設やミサイルの保管庫の建設に対して反対運動を展開する市民団体に対しても聞き取り調査を実施した。さらには、自衛隊の誘致に積極的であった地元の政治家や団体関係者への聞き取り調査も実施した。くわえて宮古島市議会議員や地元マスコミ関係者などに対しても聞き取り調査を実施した。現地調査を終えたのちには防衛省を訪ね、大臣秘書官や沖縄担当者との意見交換を実施した。調査の結果として、地元住民の意向は大きく二つに分けられる。まず、台湾有事に際して、自衛隊や国は住民の保護を具体的にどう実現するのかについて、明確な青写真を示して欲しいというもの。その観点からは、住民保護のためのシェルターの不備や配備されている自衛隊の規模の小ささに対して懸念を示していた。ミサイル部隊ではなく、住民保護を主任務とする部隊の派遣を求める声もあった。他方、自衛隊の配備や強化に対して反対する住民もいた。反対の理由としては、政府による説明が不十分であったり、説明と異なる実態があることが指摘された。最大の課題は、軍事的機密を守る必要性と住民に対して情報開示する民主的手続きのバランスを取ることだと感じた。さらには、自衛隊を交えた避難訓練や防災訓練に対しても、不十分とする意見と反対する意見とに割れていた。日本政府と地域住民との信頼関係の構築が、一層求められることが、調査を通じて明らかとなった。