表題番号:2024C-754 日付:2025/04/03
研究課題息こらえダイバーとノンダイバーにおける潜水反射の違いに関する検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 助教 彭 恒
研究成果概要
 本研究は、息こらえダイバーとノンダイバーの潜水反射が異なる原因を解明し、息こらえ潜水トレーニングによる生理的適応のメカニズムを明らかにすることを目的としている。
 本研究では、以下の3つの影響因子に着目し、実験を行っている。
1. 動脈圧受容器反射および肺伸展受容器反射による影響
 先行研究では、胸腔内圧の変化および肺の伸展が心拍数や特定の血管の収縮・拡張に影響を与えることを報告している。これらの影響を排除するため、先行研究では機能的残気量(FRC)の状態で実験を行ってきた。しかし、これらの研究では、FRCを正確にコントロールしていなかった。そこで、本研究では、呼吸流量を経時的に測定し、異なる肺気量を正確にコントロールした状態で息こらえを行い、心臓血管応答を比較検討した。
 その結果、肺気量が多いほど、一回拍出量(SV)の低下が顕著であった。FRCの状態ではSVの変化が認められなかったが、FRCよりわずかに高い肺気量でもSVが低下することが観察された。
2. 中枢による影響
 息こらえおよび運動中の息こらえにおいて、息こらえダイバーとノンダイバーの努力感の違いにより、セントラルコマンドによる心臓血管反応が異なる可能性が考えられる。本研究では、息こらえおよび運動中の息こらえにおけるセントラルコマンドの影響を比較検討している。現時点では、息こらえ単独ではセントラルコマンドの影響は観察されなかった。一方、息こらえ運動時の影響については、現在解析を進めている。
3. 筋活動による影響
 息こらえと筋代謝受容器反射の相互作用は未解明な点が多い。本研究では、その相互作用を明らかにすることを目的とする。現時点では、先行研究で用いられた運動様式を検討し、代謝受容器反射を効果的に引き起こす最適な運動を選定している段階である。
 本研究で得られる知見は、息こらえ潜水トレーニングによる生理的適応の機序の解明に寄与することが期待される。今後、さらなる解析を進め、得られた結果を学術論文として発表する予定である。