表題番号:2024C-735 日付:2025/03/30
研究課題AIを用いた極限環境微生物からのポリウレタン分解酵素探索
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 由良 敬
研究成果概要
我が国では年間約60万トンのポリウレタンが生産されており、それらのほとんどは数年後に焼却処分(サーマル・リサイクル)されている。焼却処分によって温室効果ガスが排出され、地球環境に大きな負荷をかけている。もしポリウレタンを材料レベルまで分解し、再びポリウレタンを合成することができれば、環境負荷の軽減が可能となる。現在、ケミカル・リサイクルが試みられているが、高温・高圧の化学反応を必要とするため、依然として環境負荷が大きい。一方、バイオ・リサイクルは常温・常圧での反応が期待されるが、ポリウレタンを分解する酵素は未だ発見されていない。そこで本研究では、極限環境微生物からAI技術を用いてポリウレタンを分解する酵素を探索し、その酵素を改変することで、ポリウレタンのバイオ・リサイクルの可能性を検討した。まず、ウレタン結合を切断する酵素のアミノ酸配列を収集し、それらと類似したアミノ酸配列をゲノムデータベースから検索した。次に、大量の配列をアラインメントすることで、どのアミノ酸残基が酵素活性に重要であるかを特定し、AIにアミノ酸残基の並びを学習させた。これにより、ウレタン分解酵素のモデルを構築し、高度好熱菌のゲノム塩基配列からウレタン分解酵素の候補を見出した。その後、候補となる酵素を発現させ、モデルウレタン分子に作用させたところ、微量ではあるがモデルウレタンの分解を確認することができた。さらに、実際のポリウレタン分解を試みるため、廃車座席シートからウレタンを抽出し、物理的にマイクロンオーダーまで破砕した後、酵素を作用させたが、ポリウレタンの分解は確認できなかった。この結果から、さらなる酵素改変が必要であることが明らかとなった。