表題番号:2024C-733
日付:2025/10/16
研究課題タンパク質凝集毒性に抗うストレス応答メカニズムとタウオパチー発症機構の解明
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 教授 | 坂内 博子 |
- 研究成果概要
アルツハイマー病、ピック病、慢性外傷性脳症をはじめとする「タウオパチー」は、微小管結合タンパク質のタウの異常な凝集を原因とする。タウオパチー発生の瞬間ともいえる凝集核形成の実態とメカニズムを知ることは大変重要と考えられる。細胞には生来、タンパク質ストレス応答に対抗するメカニズムを持つ。高齢化に伴い患者数が年々増加しているこれらの疾患の診断・治療法を確立するためにも、タンパク質凝集に対抗する細胞応答機構の理解は必要不可欠である。本研究では青色光依存的にタウの凝集を促すOptoTauを利用して「細胞内でタウ凝集核を形成する必要条件は何か?」を明らかにすることを目指した。青色光の時間パターンを変化させることにより、凝集タウを封入するアグリソームを形成する条件、および安定なタウ凝集形成を選択的に誘導する条件を見出した。また、タウシード依存的にiPS細胞内のタウを凝集させる条件を確立した。本研究では、凝集ストレスに抗うアグリソームの誘導と、病的な細胞に見られる安定なタウ凝集の形成という異なる細胞応答を引き出す複数の細胞モデルを確立することができた。この応答の違いに関わる因子を解析することで、細胞がタウ凝集に抗う仕組みが明らかにになると期待される。本研究で開発した人工的にタウ凝集の開始点を作る技術は、アルツハイマー病の病理進行過程をオリゴマー生成の段階から追跡することを可能にしたという意義がある。このモデルシステムを神経細胞やマウス個体に応用すれば、将来的にはタウ凝集の発達・脳内伝播のしくみの解明や、治療の薬剤スクリーニングに貢献すると期待される。