研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 創造理工学部 | 講師 | 岩本 大輝 |
(連携研究者) | 理工学術院 創造理工学部 | 教授 | 永田 靖 |
- 研究成果概要
近年,データの大規模化や多様化に伴い,異常サンプルを正確に検出する手法の開発が強く求められている.マハラノビス・タグチ(MT)・システムに属する手法は,単位空間からのマハラノビス距離を指標に異常を判定する多変量解析手法として知られているが,小規模サンプルや変数間が非線形の関係性であるデータでは精度が低下するという課題が指摘されている.そこで本研究では,SMOTE(Synthetic Minority Over-sampling Technique)による少数サンプルの拡張,機械学習手法の一つであるオートエンコーダを用いた非線形特徴抽出を行うことで,従来のMT法を補完・強化する新たな異常検知手法を提案した.
SMOTEを用いた異常検知では,不足しているクラスのサンプルを近傍情報から生成することでデータサイズを向上させ,MT法単独よりも高い識別性能をもたらした.また,複数の単位空間がある場合の異常検知では,データが不均衡かつ各群のオーバーラッピングが小さく,サンプルサイズが小さい場合にSMOTEによって判別制度の向上を確認した.
変数次元が大きな場合に使用する異常検知手法の先行研究としてRT-PC法がある.この手法は,主成分分析を行って次元を圧縮した後にRT法によって異常判別を行う手法であるが,主成分分析をオートエンコーダに置き換えることで,非線形構造を捉え,正常データの特徴をより明確に捉えることで,異常判別制度を向上した.
加えて,増加する豪雨に対する極値統計解析に異常検知手法を適用したところ,少数の外れ値がパラメータやリターンレベルに大きく影響する事例が確認された.また,年間最大日降水量データにおける異常検知手順を提案した.これにより,異常検知の適用の重要性を確認するとともに,異常検知手法の適用範囲の拡大を行った.
これら3つの研究成果は,国際会議Asian Network for Quality Congress 2024にて報告した.