表題番号:2024C-725 日付:2025/04/02
研究課題冷間曲げ加工を施したステンレス鋼の機械的性質に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 助手 山崎 諒介
(連携研究者) 早稲田大学 教授 小野潔
(連携研究者) エム・エム ブリッジ(株) 渡邉俊輔
研究成果概要
鋼橋に多用される矩形断面鋼部材は,過大な地震力が作用した際に角溶接部が割れる危険がある.この対策として角溶接の代わりに冷間曲げ加工を施した構造が有効と考えられるが,ひずみ時効によって鋼材そのものが割れやすくなる点には要注意であり,ステンレス鋼のような割れにくい鋼材が適している.本研究では冷間曲げ加工を施したステンレス鋼の機械的性質に関する情報を収集すべく,断面寸法が互いに異なる3本のSUS304製冷間ロール成形角型鋼管を対象に.各鋼管につき,平板部中央からJIS5号試験片を4本,平板部の角寄りの箇所と円弧部から小型引張試験片を7本,計11本ずつ採取し,引張試験を実施した.なお,ロール成形角型鋼管は平板を一旦円形に成形した後に角型鋼管に成形されるため,平板部にも予ひずみが導入されている.試験は早稲田大学のAUTOGRAPHで実施し,載荷速度はJIS5号試験片は5.0[mm/min.],小型引張試験片は2.0[mm/min.]でそれぞれ実施した.  試験の結果,円弧部は平板部に比べて降伏点σy・引張強さσu・降伏比YRが高い一方で破断伸びεfは低く,ステンレス鋼に関する既往の研究と同様の傾向であった.また,同じ平板部でも,円弧部に近い箇所の方が強度が高い傾向が見られ,円弧部に近い箇所の予ひずみは平板部中央よりも大きかった可能性が考えられる.本研究で対象としたSUS304製角型鋼管の平板部と円弧部で応力-ひずみ関係の形状に明確な違いは見られなかったが,冷間加工により応力-ひずみ曲線の形状が顕著に変化するケースも他の研究では報告されており,引き続き情報の収集が必要である.今後は本研究で得た機械的性質に関する情報が耐荷力に与える影響を検討するとともに,割れにくさを示す指標の1つである「シャルピー吸収エネルギー」に関する情報も実験的に収集してゆく.