| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 理工学術院 創造理工学部 | 教授 | 野中 朋美 |
| (連携研究者) | 経営デザイン専攻 | 修士1年 | 清原 琉介 |
| (連携研究者) | 経営デザイン専攻 | 修士1年 | 山田 和輝 |
- 研究成果概要
本研究は、生成AIの活用が人間の創造性に与える影響を解明することを目的とした。近年、ChatGPTやCopilotに代表される生成AIは、文章作成やブレインストーミングの補助ツールとして広く利用され始めている。ただし、これらが人間の創造的行動にどのように寄与するのか、また創造的自己効力感(creative self-efficacy)との関係性は十分に明らかにされていない。そこで本研究では、創造的自己効力感が創造的行動を促進するメカニズムにおいて、生成AIの利用頻度や、従事している業務の特性がどのように創造性と行動に影響するかを実証的に検討した。
調査対象は、日本国内のバックオフィス業務(事務処理・顧客対応等)を担う企業Aの従業員であり、7件法による93項目の質問票調査を実施した。創造的自己効力感の測定にはSSCS-Jの2項目を用い、創造的行動についてはFour C Model of Creativityに基づき独自に2項目を設計した。生成AI利用頻度は「業務において生成AIを使用するか」という設問に基づき、低頻度群(182名)、中頻度群(187名)、高頻度群(40名)の3群に分類した。これらをもとに、構造方程式モデリングによる仮説モデルの検証を行い、RMSEA、CFI、AGFIを用いて適合度を評価した。
結果、すべての群においてモデル適合度が良好であり、創造的自己効力感と創造的行動との間に有意な関係が確認された。特に高頻度群ではパス係数が0.69と強い関連性が認められ、生成AI利用頻度が高いほど、創造的自己効力感が創造的行動をより強く促すことが示唆された。本研究は、生成AIが人間の創造性を補完するだけでなく、その心理的基盤である自己効力感を強化し、創造的行動を促進する媒介的役割を果たす可能性を明らかにした。今後は他企業や他業種に対象を拡大し、データを蓄積することで一般化可能性を検証する必要がある。