表題番号:2024C-720 日付:2025/04/02
研究課題第二次世界大戦後世界における廉価住宅生産の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 助手 湊 明人
研究成果概要

<研究の目的>

20世紀初頭から現在に至るまで、住宅の大量生産、価格の低廉化という問題は、常に議論され続けている。中でも第二次世界大戦後には、戦災等の影響を受けて、住宅機能の需要が急増し、近代化の波を受けて世界各所で廉価な住宅生産が散見される。

この歴史を研究する事で、現代のスラム問題とその解決につながり得る方策を獲得することを本研究の目的とする。

<研究の方法>

2022年度から早稲田大学の建築家・吉阪隆正(1917-1980)の日記解読を発端として、第二次世界大戦後世界における建築家たちの研究を進めてきた。

その中から、ル・コルビュジエ(1887-1965)のアトリエに吉阪と同時期に在籍した建築家たちの活動に着目した。すると、彼らに共通する問題意識として、住宅価格の問題があり、この問題意識を元にして、それぞれが自国で建築活動を展開していた事が明らかになる。

この活動を記録した文献を対象として設計活動を調査し、比較分析する事で、アトリエ ル・コルビュジエでの経験を共有する彼らの活動の差異を明らかにする事を試みた。

<成果の概要と展望>

本年度は吉阪隆正を始めとして、B.V.Doshi1927-2023、インド)、Georges Candilis1913-1995、ギリシャ)を対象として、文献調査を行った。吉阪は1955年に「吉阪自邸」を設計している。住宅金融公庫の融資を受け、廉価に鉄筋コンクリートの「人工土地」を造り、その大地の上に住環境を設計した。B.V.Doshiの代表的な事例に”Aranya Low Cost Housing”がある。ここでは生活インフラなどの最小限の機能のみを設計し、住民自身が生産者となって生環境を構築する手法をデザインしている。Georges Candilisはモロッコのカサブランカにおいて、”carrières centrales housing”を計画している。この計画では市松模様のグリッドの積層によって計画されている。

以上のように同じ経験を持つ建築家たちの間でも住宅価格の問題に対する活動には大きな差異が見られた。来年度以降も本研究を継続し、ル・コルビュジエの影響下にない建築家にも展開していく計画である。