研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 基幹理工学部 | 准教授 | 出浦 桃子 |
- 研究成果概要
高品質な窒化物半導体結晶の成長技術実現に向けて,熱力学にもとづく新規Si表面炭化によるSiC/Si基板作製のメカニズム解明とプロセスの高度化を目的とした.
まずCO分圧依存性を調べた.低CO分圧ほど,ファセットが明瞭かつ大きなSiCグレインが形成された.表面粗さは低CO分圧ほど大きく,相境界をまたいでも連続的に変化した.相境界近傍で特にボイドのサイズばらつきが大きく,SiC形成量の面内不均一が著しかった.次に炭化温度依存性を調べた.高温ほどSiC形成量が多くボイドが大きい上に,相境界近傍で面内均一性が低下した.さらに,相境界からの距離がほぼ等しくなるような温度条件を選定した.低温ほど反応が促進され,面内均一性も低下した.
高温ほどCOやSiの表面拡散・外方拡散が促進されて炭化反応が促進される.また,低CO分圧ほど炭化反応が促進されることが分かった.CO分圧が低いほど初期核密度が低いため,表面がSiCで完全被覆されるまでの時間が長くなり,Siが露出している間はSi外方拡散が促進されることから,SiC形成量が多くなりボイドも形成されやすい.相境界からの距離が等しくなる条件において低温ほど反応が促進されているのは,低温ほど相境界が低CO分圧条件になるためであり,温度依存性よりもCO分圧依存性の方が強いことを示唆している.相境界近傍で面内均一性が低下する原因については,比較的蒸気圧の高いSiO分圧が相境界で最大となるため,反応時により多くのSiがSiOとして脱離する,SiC初期核が発生するまでの時間が長くなる,初期核密度に面内分布が生じる,ことなどが影響している可能性が考えられる.
以上より,窒化物半導体成長に適したSiC/Si基板を得るには,高配向なSiCグレインが得られ,相境界近傍を避けた低CO分圧条件のうち,適切な温度・CO分圧範囲が望ましいと考えられる.