表題番号:2024C-704 日付:2025/04/03
研究課題証券市場における不実開示に対する法的責任制度と「Materiality」要件の再検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 教授 和田 宗久
研究成果概要
 本研究は、証券市場における不実のディスクロージャーについて、どのような開示がなされた場合に金融商品取引法(以下、「金商法」とする)上の各種法的責任制度が適用されるべき不実の開示として捉えるべきか、という問題について研究を行うものである。具体的な研究手法としては、不実開示が行われたことを示唆する適時開示情報や同時期の株価の推移に関するデータを自動的に収集するスクリプトを開発し、不実開示によって株価が大きく変動したケースを抽出して、これまでに各種法的責任制度が適用されたケースと比較するなどの分析を行い、いかなる不実開示をして「重要な虚偽記載」として捉えるべきかという、いわゆる「重要性(Materiality)」の要件のあり方を中心に、法的責任制度の対象とすべき不実開示について検討を行い、最終的には可能な限り、自動的に問題となり得る「重要な虚偽記載」に関する事例を検知するシステムを構築することを目指すものである。
 本研究期間中は上記のスクリプトの開発作業に従事した。その結果、1つの会社(本研究ではマイクロソフト社を取り上げた)について、同社が適時開示(Form8-K)が行ったタイミングとその前後で株価が大きく動いたケースを自動で把握するスクリプトを組むことができた。今後は、そのように把握した中で、「重要な虚偽記載」の候補となり得るケースを抽出すること、さらに、複数の企業について自動で分析を行うようにスクリプトで実行可能なことを拡張していくことを目指している。