表題番号:2024C-695 日付:2025/04/04
研究課題神子柴・長者久保系石器群の系統学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 長崎 潤一
研究成果概要
 本研究では旧石器時代終末期~縄文時代草創期の石器群である神子柴・長者久保系石器群をテーマとして研究を進めた。神子柴・長者久保系石器群は縄文時代草創期に先立つ文化と長年規定されてきた。しかし近年の石器群に伴う微小炭化物の炭素年代測定、神子柴・長者久保系石器群の他の石器群との共伴事例の増加など、年代的な位置づけに疑義が生じている。本研究ではそのいくつかについて取り上げ、石器群の系統性について検討した。
 北海道帯広市で報告された帯広空港南B遺跡の報告書(2024)では、神子柴・長者久保系の刃部磨製石斧と有茎尖頭器が共伴したと報告された。またこの石器群の炉の炭化物の炭素年代測定値が21000~22000calBPとされた。1点ではあるが忍路子型細石刃核から剥がされたと考えられる細石刃が共伴した。また新潟県津南町上原E遺跡では神子柴・長者久保系刃部磨製石斧に白滝型細石刃核石器群と木葉形尖頭器が共伴した。
 21000calBPという年代値は武蔵野台地ではⅣ層中部の砂川期石器群かその直後となり、刃部磨製の石斧の共伴事例は無いし細石刃出土例もない。本州側では神子柴・長者久保系石斧の年代は17000~15000年前頃とされている。1970年代には渡来系石器群とされ大陸起源が想定されていた神子柴・長者久保系石器群であるが、1990年代以降本州島内での成立が定説化していた。
 本研究ではこの石器群の北海道と本州の年代格差を埋めるため、本州の細石刃石器群の中に神子柴・長者久保系石器群の部分的共伴事例がないかを調査した。また当該石器群の炭素年代測定値の収集を行った。同時に北海道の細石刃石器群の中に神子柴・長者久保系石器群の石器を探す作業を行った。