表題番号:2024C-691
日付:2025/04/04
研究課題20世紀後半フランスにおける《メタファーをめぐる思想》の研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 文学学術院 文学部 | 教授 | 西山 達也 |
- 研究成果概要
本研究は、現代において「メタファー」という言語表現の一事象が、いかにして、単なる「言葉のあや」としてではなく、人間の世界認識と実存の根幹をなすものとして思考されたのかを明らかにすることを試みる研究の基盤を構築するものである。メタファーをはじめとする修辞的な言語使用のはらむ諸問題は思想史研究においてこれまで副次的なものと見なされ、十分に探究されてこなかった。本研究においては、20世紀フランスの思想家たちが、現象学・解釈学・構造主義・概念史研究等の諸潮流を背景としつつ、一方で[a]「メタファー」と概念の関係、もしくは、「メタファー」がもたらす概念形成と学知の変革可能性を、他方で [b]「メタファー」を通じての主体・実存の創出と変容可能性を、どのように思考したのかに着目した。こうした研究は、言語・思考・主体の変革を可能にするものとしてのメタファーの役割を積極的に評価することで、人間と言語の関係をめぐる現代的状況に対しても呼応する試みとなる。エマニュエル・レヴィナス、ジャック・デリダ、ポール・リクールらの思想に限定して布置を描くことを想定していたが、デリダとリクールの1960年代から70年代にかけての仕事を起点としつつ、構造主義人類学および哲学的人間学の思想潮流にまでコーパスを広げる必要性が生じ、その資料調査をおこなうに至った。