表題番号:2024C-690
日付:2026/07/26
研究課題ミクロネシア連邦ヤップ州における気候変動の社会・環境・文化的影響
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 文学学術院 文化構想学部 | 教授 | 高野 孝子 |
- 研究成果概要
筆者は「ミクロネシア連邦ヤップ州における気候変動の社会・環境・文化的影響」のタイトルで、科研費を得て24年度より研究を開始している。本助成金を受け、アンケート調査を前倒しして実施することが可能となった。6つの離島民集落にて、328名のアンケート回答を集めることができた。このアンケートは調査全体の一つの要素に過ぎないが、本島に居住する離島民の回答からは暫定的に次を導いた。
移動の直接的な理由は、家族扶助・就労・教育並びに研修。旱魃や海面上昇などの環境的理由を直接的に上げた人たちは極めて少ない。一方で、それぞれの島では気象や海面上昇によって生活が困難であるという認識は強い。また、本島での居住期間については、一定の定住者以外は、一時滞在や循環移動が混在し、予定が不確定である人たちが多い。
家族とともに来島する人たちの多さを見ると、離島民の本島移動は、個人の移住というより、親族世帯が島と本島に生活機能を分散させる過程と見ることもできる。仕事、教育、医療、子育て、家事、通院同行などは、親族世帯全体の生活を維持するために分担されている。しかし、この分散は安定した役割分業ではない。本島側では同居・ケア・食費・交通の負担が集中し、脆弱な生活環境であることが見て取れる。出身島側では家屋、タロ畑、伝統知の維持が弱まる可能性がある。したがって、本島移動は親族世帯の維持戦略であると同時に、その維持基盤を再編し、部分的には弱める過程とも言える。