表題番号:2024C-684
日付:2025/04/03
研究課題刑事施設における外部との連携の在り方に関する研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | 法学学術院 大学院法務研究科 | 教授 | 小西 暁和 |
- 研究成果概要
- 本特定課題研究助成費の研究期間に、府中刑務所、福岡刑務所、宮城刑務所、福島刑務所、福島刑務支所、市原青年矯正センターといった刑事施設を参観し、調査を実施した。こうした刑事施設における外部との連携には、刑事施設の「塀」の「外から中へ」と「中から外へ」といった二つの流れが考えられ得る。一方で、「塀」の「外から中へ」の流れに関して言えば、2006年に刑事収容施設法が確立して以降、刑事施設の管理運営及び処遇に多様な外部のアクターが関与してきた。同法上で規定された刑事施設視察委員会だけでなく、様々な専門職や外部機関の職員などによる刑事施設内での活動が活発化している。この点、懲役の場合に「作業」は専ら「刑」の内容を構成していたが、2025年6月から施行される拘禁刑の場合には「作業」が専ら「処遇」の内容へと法的位置づけが変更される。こうした「処遇」の担い手としても専門職や外部機関の職員などの役割がより重要になる。「作業」に関しては、とりわけ作業療法士の役割が期待される。作業療法の「作業」は“occupation”を意味するとされ、従来の懲役における「作業」の訳語として用いられてきた“work”や“labor”とも性格を異にし、より「処遇」に適したものと言える。なお今後は、受刑者の家族・地域の人々・被害者とのつながりも一層重視すべきと考える。他方で、「塀」の「中から外へ」の流れについては、受刑者の施設外での活動に関して、「開放的施設」(刑事収容施設法89条2項)が広がりつつあるが、現在低調な「外部通勤作業」(同法96条)や「外出・外泊」(同法106条の2)も積極的に活用されることが期待される。また、釈放後に向けた連携についても、2022年の刑事収容施設法一部改正で導入された「社会復帰支援」(106条)は刑事施設外での実施も可能とされており、社会内処遇との連携を図りながら推進されることが求められる。