表題番号:2024C-680
日付:2025/03/31
研究課題デジタル立憲主義とプラットフォーム規制
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 法学学術院 法学部 | 助手 | 高橋 史則 |
- 研究成果概要
- デジタル・プラットフォーム(DPF)事業者規制において、デジタル立憲主義が注目を集めているが、発展途上の概念であるため、必ずしも明確でない点を抱えている。本研究課題のもとでは、デジタル立憲主義を明確化・精緻化することを試みた。先行研究において、デジタル立憲主義の統一的な定義は見られないものの、立憲的価値によってDPF事業者に何らかの統制を及ぼしていくという方向性は共有されているようである。また、理念としての「デジタル立憲主義」と実装プロセスとしての「デジタル空間の立憲化」(立憲化プロセス)という2つの次元を分けて考察するべきであるとされていることが分かった。本研究は、先行研究を基礎としてデジタル立憲主義の明確化・精緻化を試み、次の2点を得た。第一に、立憲化プロセスを、①「国家法を通じた立憲化」、②「プラットフォーム法を通じた立憲化」、③「ボトムアップ的規範形成を通じた立憲化」という3つのカテゴリーに分類する試論を得た。これによれば、国家による規制、DPF事業者による自主規制、ボトムアップ的に形成される規範などの多様な立憲化プロセスを明確に整理できるものと思われる。第二に、先行研究においては従来の法理論との関係について十分な議論が展開されていなかったため、私人間効力論とグローバル立憲主義との関係を検討した。その結果、デジタル立憲主義は私人間効力論と部分的には重なりをもつ一方でそれとは異なる次元を含む議論であること、デジタル立憲主義はグローバル立憲主義と構造的に類似しており後者に向けられる批判は前者にも向けられうることが分かった。今後は、デジタル立憲主義を基本的な分析枠組みとして、コンテンツ・モデレーションの統制に焦点を絞り、主に日本とアメリカを対象とした研究を進める計画である。なお、本研究課題のもとでの上記の研究成果をまとめた論文を、学内紀要に応募予定である。