表題番号:2024C-679 日付:2025/04/18
研究課題スウェーデンとフィンランドから学ぶ労働生産性上昇に関する理論研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 大学院政治学研究科 教授 福島 淑彦
研究成果概要

本研究は、日本における労働生産性の持続的な向上と、それに伴う賃金上昇の実現可能性を明らかにすることを目的としており、2000年以降に顕著な労働生産性の上昇と賃金の増加を達成したスウェーデンを分析対象としている。特に、1990年代初頭にバブル経済の崩壊という共通の出発点を持ちながら、その後の経済パフォーマンスが大きく分かれた日本とスウェーデンを比較することで、日本経済の長期停滞の構造的要因を明らかにし、持続的成長のための政策的・実務的示唆を導くことに本研究の意義がある。

研究は初期段階にあり、企業の経営戦略と人的資本管理、労働者の働き方や労働インセンティブ、公的部門による支援施策の三点に注目し、労働生産性の向上における企業・労働者・政府の相互作用を多面的に把握するための基礎的作業を進めている。

2024年度には、公開財務諸表やOECD等の統計を用いて、「従業員一人当たり営業利益」などの代理指標を算出し、産業別・業種別に日本とスウェーデンの労働生産性の傾向を把握する予備的な国際比較分析を実施した。また、柔軟な働き方(リモートワーク、フレックスタイム制、短時間勤務など)の普及状況や、公的部門による企業支援制度の導入実態について、既存の統計資料や制度比較を通じて両国の制度的特徴を整理・分析した。これらは今後の制度設計や企業行動分析の前提条件となる。 さらに、企業の「選択と集中」戦略や人的資本管理、労働者のインセンティブ設計に関する先行研究を幅広くレビューし、各要素が労働生産性に与える影響についての理論的枠組みの構築に向けた準備を進めている。

現在は、これらの基礎作業を踏まえ、今後予定している実態調査の設計を進めており、企業へのインタビューやアンケート調査、政策担当機関へのヒアリング等を通じた質的・量的調査に向けた基盤整備を行っている段階にある。