表題番号:2024C-673
日付:2025/04/04
研究課題日本統治期台湾における植民地言論空間と軍事関連メディアの研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 政治経済学術院 政治経済学部 | 助手 | 谷川 舜 |
- 研究成果概要
- 本研究の目的は、国民国家とは異なる植民地の言論空間の構造を明らかにし、植民地公共圏の可能性を検討することにある。先行研究の大部分は、民主主義と民族自決の潮流を背景とした議会政治の参加拡大をめぐり、台湾人知識人が民族や階級の立場から総督府と非武装路線の抵抗・弾圧・協力で切り結んだ点を論じてきた。これに対して本研究の視角は、非武装の反植民地闘争で後景化されながらも、台湾に一貫して存在した軍事動員を通じた政治参加の拡大の諸相を、総督府や台湾人知識人が重視しなかったオルタナティブな言論活動の実践として把握する点にある。研究代表者はまず1910年代の軍事援護団体機関誌の分析を行い、植民地における女性や子供らを主体とする言論空間の構築の試みは挫折した点を明らかにした。この成果は2024年台灣文學學會年會にて報告した。また、1930年代以降に関して、在郷軍人会機関誌、右派の週刊紙やパンフレット、彼らと連携した地方紙など台湾・日本発行メディアの分析に加えて、今回新たに香港・広東などで発行された占領地メディアを収集できた。さらに、先住民族が多数居住する台湾東部におけるフィールドワークも行った。今後はこうした「戦中派」とも言える台湾の青年層における植民地のメディアとミリタリズムの影響を、2025年に開催されるシンポジウムでの報告に向けて論文化を進める予定である。