表題番号:2024C-662 日付:2025/09/05
研究課題因果効果推定のための実験計画法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) データ科学センター 准教授 堀井 俊佑
研究成果概要
本研究では、複数の介入を含む実験データから因果効果を高精度に推定するための新しいベイズ的手法を提案した。従来の因果推定法は、主に単一のデータセットを用いた平均因果効果(ACE)の推定に焦点を当ててきた。しかし現実の研究現場では、複数の実験や条件下で得られたデータを統合的に解析し、より柔軟かつ精緻な因果効果の評価が求められる。本研究では、構造的因果モデル(SCM)に基づき、複数データセットから導かれる構造方程式のパラメータに対して事後分布を推定し、これを用いて因果効果の事後分布を導出する方法を開発した。これにより、ベイズ最適性に基づく推定性能の向上が実現され、従来法に比べて広範な条件下での精度改善が確認された。さらに本手法は、平均因果効果にとどまらず、特定の共変量や介入条件に依存した修正因果効果を推定可能とし、因果効果の不均一性を捉えることで、実践的な応用や解釈の幅を拡大する点に特色を有する。シミュレーション実験の結果、本研究の枠組みは既存の手法を凌駕する推定精度を示すとともに、因果関係のより詳細な理解を可能とすることを確認した。本研究は因果推論における実験計画とデータ解析の融合に新たな知見を提供し、社会科学や医療研究など多様な分野での応用可能性を示すものである。