表題番号:2024C-650 日付:2025/03/31
研究課題がん微小環境中でがん細胞外小胞を取り込む細胞種のプロファイリング
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等研究所 講師 西田 奈央
研究成果概要

【背景と目的】 

がん細胞を含むほぼ全ての細胞はエクソソームを含む細胞外小胞(Extracellular vesiclesEV)を受け渡し、周囲の細胞と情報交換を行っている。申請者は、がん組織内でのEVの受け渡しの様式や機能の理解を目標として研究を進めている。本研究計画では、フローサイトメトリーを活用し、特にがん細胞から分泌されたEVsがどの種類の細胞に取り込まれやすいかを特定することを目指した。

 

【方法】

EVsを標識したマウス乳がん細胞株をマウスに移植し、原発巣および肺転移モデルを準備した。各組織を回収後、細胞を分離してフローサイトメトリーでEVsの蛍光および細胞マーカーを検出することで、組織内に存在する各細胞種に関して、がんEVsを取り込んだ細胞の割合を測定した。

 

【結果と今後の展望】

 原発腫瘍および転移組織の解析から、特定の免疫細胞ががんEVsを顕著に取り込んでいることが確認された。これらの細胞は、がん細胞からの情報を受け取りやすい特性を持つと考えられる。一方で、他の細胞群ではがんEVsの取り込み割合が低いことが観察され、これによりがんEVsの選択性が示唆された。また、がんEVsの取り込みパターンは、興味深いことに臓器の種類によっても異なる傾向が見られた。細胞種によってがんEVsの取り込みに違いがあることは予想されていたが、実験的に定量的に証明された例は少なく、本研究の結果は価値あるものであると考える。

【考察】

本研究の成果は、がん組織内および全身におけるEVの受け渡し様式の理解を深めるものである。今後は、さらに多様ながん種でも比較するとともに、標的特異的な輸送の分子機構の研究につなげていきたい。