表題番号:2024C-645
日付:2025/07/04
研究課題カナダ3学区におけるグローバル・シティズンシップ教育の取り扱いについて
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 平山郁夫記念ボランティアセンター | 講師 | 由井 一成 |
(連携研究者) | 平山郁夫記念ボランティアセンター | 講師(任期付) | 由井一成 |
- 研究成果概要
- 本研究では、カナダのグローバル・シティズンシップ教育(GCE)について、ブリティッシュ・コロンビア州、アルバータ州、オンタリオ州のカリキュラムに焦点を当て、また各州において社会科教育に従事した経験のある教員へのインタビューをもとに、分析を行った。GCEの理論的研究については、地位としてのシティズンシップ、帰属感としてのシティズンシップ、実践としてのシティズンシップの3観点から議論がなされている。本研究では特に、帰属感としてのシティズンシップ教育と実践としてのシティズンシップ教育に焦点を当て、分析と考察を行った。帰属感としてのGCEに関しては、これまでの主流型GCEである柔和的GCE(Soft GCE)と批判的(Critical GCE)に対し、それらを補完する位置づけとして高等教育で展開される革新型GCE(GCE Otherwise)が提唱されている。一方でこれまでの研究の過程で、革新型GCEの初等・中等教育における実践事例については検討されていないことが明らかになっている。そしてこの点こそが、カナダにおける実践としてのGCEのあり方に関する研究の新規性であった。実践におけるシティズンシップはこれまでコスモポリタニズムとリベラル・ナショナリズムの間で激しい論争が展開されてきた。しかしながらGCEの文脈に置いては、後者が国内に矮小化された理論であること、一方前者はその内容が実現可能性に乏しい点が批判されてきた。本研究ではそれらの批判を乗り越える新たな理論として、リベラル・グローバリズム論を展開するに至った。研究の成果については、異文化間教育学会第45回大会(2024年6月22日)、日本国際理解教育学会第33回研究大会(2023年6月29日)および第31回日本グローバル教育学会全国研究大会(2024年8月24日開催)において発表を行った。また博士論文「カナダのグローバル・シティズンシップ教育(GCE)~多元的アイデンティティの育成と持続不可能性への挑戦~」を提出し、博士(教育学)の取得に至った。