研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | 會津八一記念博物館 | 助手 | 有村 元春 |
- 研究成果概要
後期青銅器時代(紀元前1600~1200年頃)には、東地中海周辺地域において大規模な交易ネットワークが成立していた。しかし、その実態については未解明な部分が多く、さらなる研究が求められている。本研究では、この交易ネットワークの解明に資するため、東地中海各地で出土しているキプロス製土器に注目し、その時空間的な分布傾向を分析することを目的とした。これにより、キプロス製土器がどのように流通していたのかを明らかにし、当時の交易システムの一端を解明することを目指した。
研究の一環として、近年の発掘報告書や論集を収集し、東地中海周辺地域で出土したキプロス製土器のデータベースを構築した。このデータベースを活用し、特にエジプトにおけるキプロス製土器の流通について検討を行った。その成果の一部として、早稲田大学考古学会において「新王国時代のエジプトにおけるキプロス島製土器の流通」と題した報告を行い、エジプトの出土傾向を東地中海周辺地域と比較することで、その特徴を明確にした。
さらに、海外においては Reconsidering the Production and Distribution of "Black Lustrous Wheel-made Ware" based on Finds from the Nile Valley と題した発表を行い、東地中海一帯で出土している従来キプロス製とされてきた土器の生産地や流通経路の再評価を試みた。
本研究を通じて、東地中海周辺地域におけるキプロス製土器の流通実態の解明に寄与するとともに、当時の交易ネットワークの構造をより深く理解するための基盤を築くことができた。今後は、さらに出土例を増やし、より広範な地域との比較を進めることで、当時の交易システムの全体像をより詳細に明らかにしていく予定である。