表題番号:2024C-632
日付:2025/04/04
研究課題第二言語産出時におけるメタ言語意識プロセスの解明
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | グローバルエデュケーションセンター | 講師 | 生田 美希 |
- 研究成果概要
- メタ言語意識とは, 第二言語(L2)産出時の誤りに学習者が主体的に気付き修正するための, L2産出能力向上に欠かせない高次の認知活動である。しかし第二言語習得研究においてメタ言語意識は, 言語産出に影響する一要因として扱われるにとどまっている。本研究では, L2比喩産出モデルの検証を通して, これまで明らかにされてこなかった L2メタ言語意識の発生条件と進行過程について, 文献調査を中心に検討した。まず, メタ言語意識が発生するかしないかについては, 当事者がメタ的思考が必要かを判断する「使用判断」という過程が重要だということが分かった(田中・楠見, 2007)。例えば, 日本語母語話者が 長い足 をL2(英語)で表現する場合 long leg が思い浮かび違和感は覚えない。それに対し, 大根足 には radish leg を思い浮かべることができても違和感を覚える。このような言葉への批判的気づきがメタ言語意識であり, その発生条件は違和感を覚えて考える行為があるかないかである。このように比喩直訳産出の際に発生すると考えられるメタ言語意識であるが, その発生条件には大きく分けて二つの要因があると考えられる (Wolter, 2023)。まず一つ目として, 言語要因がある。その一例として, 表現したい言葉がどの程度非字義的か(文字通りの意味でないか)という表現の比喩性がある。そして二つ目として, 個人要因にはL2学習者がL1とL2がどの程度異なると感じるかという心的言語距離がある。今後は田中・楠見(2007)の批判的思考の認知プロセスモデルを参考に, これらの要因がどのようにメタ言語意識の「使用判断」に影響するのかを心理実験的アプローチで検討していく。