表題番号:2024C-621 日付:2025/04/04
研究課題トーリック多様体の新たな特徴づけについて
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 奥村 克彦
研究成果概要

申請者はポアソン構造の分類に興味がある。R.Lima-J. V. Pereira2014年の先行研究で、対角ポアソン構造が射影空間を特徴付けることが知られている。その特徴付けがトーラスの作用と関連しているとB. Pymによるサーベイに書かれている。元々申請者は、対角ポアソン構造を多様体の一般化であるスキームのさらなる一般化であるスタックにまで拡張することを考えていた。その中で、あるスタックがそのポアソン構造を持つという条件とトーリック多様体であるという条件の関連が深いと想定するに至った。一方で、その2つの条件の必要性・十分性を証明するには至らなかった。このギャップを埋めるために、トーリック多様体であるための十分性を研究する必要があった。

トーリック多様体とは代数的トーラスを稠密な開部分集合として含み、かつトーラス上の自身への作用を多様体全体に拡張できるものをいう。例えば、アフィン空間や射影空間はトーリック多様体であり、これらのある種のブローアップもまたトーリック多様体の例である。トーリック多様体は錐の集まりである扇によって記述できる。扇で具体的に記述ができるため、構造が明示的に分かってコホモロジーなどの計算がしやすいという特徴がある。複雑な問題を単純化するときや具体例を見つけたいときに、代数幾何学の様々な文脈でトーリック多様体は用いられてきた。多様体がトーリック多様体であるための十分条件は、コックス環を用いる方法などいくつかの方法が知られている。

今年度は既存の特徴づけのスタックへの一般化として、コックス環を用いてトーリック多様体を特徴付ける方法を精査した。今のところこの方法のスタックへの一般化までは至っていない。今後も引き続きこの研究に取り組んでいく所存である。