研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 国際学術院 国際教養学部 | 教授 | 麻生 享志 |
- 研究成果概要
アメリカ文化におけるアジア系の台頭が目覚ましい。ヨーロッパ系白人文化が中心となり展開してきたアメリカ主流文化が、二〇世紀を通じてアフリカ系アメリカ文化を取り入れ、さらに今世紀に入ってはアジア系アメリカ文化を重要な一部としていることは周知の事実だが、本研究ではアメリカ主流文化におけるアジア系文化受容の起源を1960年代後半にはじまったアジア系アメリカ運動を経た1970年代に辿る。
とくに対象とするのは、大衆音楽における主流文化と少数派文化との協働である。アフリカ系女性作家 Alice Walkerは Color Purple (1982) において、ジャズやブルースといったアフリカ系大衆音楽を取りあげ、これをアフリカ系コミュニティ内部におけるジェンダーの問題と絡めて主流文化への働きかけを紐解いた。これまでにアフリカ系音楽における同様のアプローチは数多く研究されてきたが、アジア系音楽においては必ずしもそうではない。
たとえば、日系活動家の Chris Iijima が舞踏家 Nobuko Miyamoto と音楽家 Charlie Chin とのコラボレーションから “We Are the Children” をはじめとする楽曲をリリースし、アジア系のアイデンティティを高らかに歌ったのは1973年のことだった。1977年には日系文学の先駆者 Toshio Mori の影響色濃い音楽バンド Yokohama California が、日系コミュニティの過去をフォーク音楽に載せて表現した。そして1980年には、被爆都市広島にその名称を辿るフュージョンバンド Hiroshima が米メインレーベルからレコードデビューを果たすなど、着実にアジア系音楽は主流文化へと浸透した。
本研究では、このような歴史的変遷を背景に主流文化とアジア系文化の相互連関性に注目し、文化の複合性を解き明かす。