表題番号:2024C-581 日付:2025/04/22
研究課題反復スプリント運動時の神経制御の特徴の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 講師 欠畑 岳
研究成果概要

【背景】最大強度の運動を短時間の休息で疲労困憊まで実施する反復スプリント運動(Repeated Sprint Exercise: RSE)は、多くのアスリートが取り組む効果的なトレーニング方法のひとつだが、このときの中枢神経系の特徴は不明である。 

【目的】RSEにおける筋疲労について中枢神経系の視点から解明すること。 

【方法】RSEの運動課題はスプリント走とした。男子陸上競技選手9名は、30m走を複数本、最大努力で実施した。試技数は被験者により異なり、1本目のパフォーマンス(タイム)が10%低減した本数を最後の試技とした。なお、1本ごとの休息は20秒とした。片側下肢8筋(大殿筋、大腿直筋、大腿二頭筋、半腱様筋、外側広筋、前脛骨筋、ヒラメ筋、腓腹筋外側頭)の筋電図(EMG)を計測した。ハイスピードカメラと光電管より時空間変数を算出した。ランニングサイクルを4局面 (接地期、スウィング期前半、スウィング期中盤、スウィング期後半)に分割し、各局面における積分筋電図(iEMG)を算出した。これらの変数について、それぞれ1本目の試技、走速度が5%低減、10%低減した3試技を分析対象とし、条件間の違いを検討した。 

【結果】試技数の増加(筋疲労の亢進)に伴い、走速度とピッチの有意な低下が観察された。また、iEMGは、大腿直筋および大殿筋において交互作用が認められ、それぞれ大腿直筋がスウィング期前半・中盤において、大殿筋は接地期およびスウィング期中盤・後半おいて低下が認められた 

【考察】スプリント走の加速局面では、股関節伸展動作による地面反力の生成と、スウィング脚のリカバリー動作の両方が走速度の獲得に重要である。 RSEのような短時間の休息で疲労困憊に至るスプリント走では、筋疲労の亢進により、特に股関節筋の神経筋活動が鈍化することで、パフォーマンス低下が誘発されるものと考えられる。