表題番号:2024C-564 日付:2025/01/27
研究課題身振りの自己指向的機能の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 准教授 関根 和生
研究成果概要

本研究では,ジェスチャーの語彙検索機能の再検討をおこなった。発話とともに自発的に産出されるジェチャーは,自発的ジェスチャーと呼ばれる。これまでの研究では,自発的ジャスチャーは主に2つの機能をもっていることが示唆されてきた。聞き手である他者にメッセージを伝達するジェスチャーの機能は,他者指向的機能と呼ばれ,話者自身の発話を促進するジェスチャーの機能は⾃⼰指向的機能と呼ばれる。ジェスチャーの発話促進を支持する仮説の一つに語彙検索機能仮説がある。この仮説は話者が表現したい内容について,ジェスチャーが正しい⾔葉を⾒つけるのを助けると仮定する。だが語彙検索機能仮説は,先行研究で多くの議論がされているにも関わらず,一貫した証拠が得られていない。そこで本研究では,ジェスチャーが語彙検索を促進するかどうかを検討した。

64名の成人が初対面同士の21組となり,調査に参加した(M = 20.6SD = 1.8)。課題として,参加者は語り手役と聞き手役に分かれ,提示されたストーリーを相手に再話することが求められた。ストーリーは,文字のみで内容を提示される物語文刺激と,動きを伴って提示されるアニメーション刺激があった。ストーリーを語る際,参加者は,ジェスチャーに関する指示を何も受けない統制条件,ジェスチャーの使用を制限される抑制条件,ジェスチャーを行うように促される促進条件のいずれかに割り当てられた。実験の様子はビデオカメラで録画し,ELANを使用してコーディング分析を行った。その結果,ジェスチャー条件が,発話の非流暢性を示す有声休止に影響を与えていることがわかった。とくに促進群は,他の2群と比べて有意に有声休止が少なかった。このように本研究では,語彙検索仮説を部分的に支持した結果が得られた。