表題番号:2024C-563 日付:2025/04/06
研究課題協調学習における主体的な学びの調整を支援するエージェントの効果検証に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 准教授 望月 俊男
研究成果概要
 協調的議論において参加者が十全かつ均等に参加することは重要であるが(Isohätälä et al. 2017)参加する学習者にとって,参加者同士が相互に参加度合いを調整しつつ,平等に参加できるようにすることは難しい.学習者の均等な参加を実現するために様々なプロンプトやスクリプトを提供する研究が行われている(Strauß & Rummel 2021).
 本研究では,対面協調学習場面を対象に,参加者の話し合いの発話割合をリアルタイムに分析して,偏りが見られた場合に均衡化する発話プロンプトを出す3次元対話エージェントを開発している.そのプロンプトはアクティブリスニング方略を基盤としており,協調学習の内的スクリプトとしてデザインされている.
 本研究では,このエージェントによる学習支援の効果検証を目的として研究を推進した.批判的ディスコース分析を用いて分析したところ,想定した効果だけでなく,エージェントのプロンプトに対する学習者の反応とコミュニケーションをを分析してみると,学習者がもつ学習評価の捉え方が顕在化し,そもそも教育的フィードバックに対する不信があることが明らかになった.そこでエージェントと学習者の関係性を,関係論的な観点から修正する新たな相互作用のモデルについて検討を行った.これらの結果は,日本教育工学会全国大会および情報処理学会全国大会で発表し,議論した.今後は,この成果をもとにして新たなエージェントとの関係性を構築したシステムを開発するとともに,どのようにして学習者と良好な関係を形成するのかを分析していきたいと考えている.