表題番号:2024C-562
日付:2025/04/04
研究課題大学の国際化に伴う大学図書館の機能と役割
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 人間科学学術院 人間科学部 | 准教授 | 杉本 清香 |
- 研究成果概要
- ここ数十年の高等教育の国際化の傾向に伴い、日本を含む非英語圏の国々の大学・大学院において英語による専門科目の授業(English Medium Instruction: EMI)が急増している。この変化に際し, 第二言語として英語を話す大多数の国内学生および教員にどのような支援ニーズが発生し, どのような支援を行うべきなのか検討することは日本の大学にとっても大学図書館にとっても急務である。これまで行われてきた国際化と大学図書館による教育支援に関する研究や事例報告は, 留学生への学習支援や留学生支援に携わる図書館職員のスキルアップに関するものが多い。日本のような非英語圏の国の大学において授業が英語化されることにより, 英語が母語でない国内学生や教員にどのような支援ニーズが発生し, 大学図書館にどのような支援が求めてられているのかを調査した研究は希薄である。したがって本研究では、日本の大学生のEMI経験に関する文献調査とEMI担当教員を対象とした半構造化面接調査を実施し、EMI担当教員および受講生の学習支援ニーズと大学図書館に期待される役割について明らかにすることを目指した。結果、教員と学生両者において英語学習支援を中心とした多様な学習支援ニーズが発生していること、そしてそれらのニーズの多くが顕在的な形ではなく、潜在的な形で存在していることが明らかになった。例えばEMI受講生については, 困難に際しても「何もしない」という学生の比率が比較的多く、支援を求める対象もクラスメートや留学生、授業担当教員であった。EMI担当教員も支援を受けることに関心がありつつもFDやRAがそれを提供してくれることを受動的に期待する傾向が強く, 大学図書館等に積極的に支援を求めた経験のある面接参加者はいなかった。両者にて図書館が学習支援を行う存在であるということの認識が薄いことが示され、教員・学生・図書館間での連携へ向けた働きかけの必要性が明らかになった。