表題番号:2024C-555 日付:2025/04/04
研究課題生成AIを活用した文書作成スキル向上プログラムの提案と実証
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 講師 高橋 麻衣子
研究成果概要

インクルーシブ教育システムの構築が推進され,多様な教育的ニーズを持つ学習者がともに学ぶ環境の整備が喫緊の課題となっている。近年,通常学級の中には担任教員からみて,知的発達に遅れはないものの学習面のみに著しい困難を示す児童生徒が 6.5% いることが報告された(文部科学省,2022)。このような学習者にとって,ICTは情報の入出力の手段を増やす強力なツールとなる。GIGA スクール構想によって配布された一人一台のタブレット端末を活用すると,自力での読み書きに困難を持つ学習者も,文章についての読み上げ音声の提示によって文章内容にアクセスし,タイピングや音声入力によって文章作成が可能となる。本研究では,所沢市内の児童クラブ(学童)と連携し,タブレット端末の活用によって学習に困り感のある児童の学習支援を行うことを目的とした。

所沢市内の児童クラブに,各種学習アプリを搭載したタブレット端末(iPad10世代)を10台設置し,自学の時間に活用してもらった。その結果,学習に困り感をもち宿題を忌避する傾向にある児童が自学時間にタブレット端末を活用した学習を継続することが観察された。3ヶ月の介入の結果,彼らの学習への動機づけが向上していることが示され,宿題の代替としてのタブレット学習の効果が示唆された。

さらに,夏休み,冬休み,春休みに児童クラブ内で参加者を募って「タブレット端末を活用した作文講座」を実施した。書くことが苦手な児童を中心に希望者を募り,タブレット端末の音声入力やタイピングによって作文の書き方を指導したところ,文書作成への効力感が高まり,また,作文の文字数と質の増加がみられた。高学年において作文のアイデアを生成する際に他者のアイデアをみるフェーズと生成AIを相談相手とするフェーズを導入したところ,他者が生成したアイデアを観察するとアイデアの幅が広がること,生成AIを使用すると思考の深化がみられることが示唆された。