表題番号:2024C-546 日付:2025/03/19
研究課題亜種リュウキュウコノハズクの日齢推定手法の確立
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 助教 澤田 明
研究成果概要
長期的な生物季節の観測は、進化生態学上の問いを解明するため、および気候変動の影響を評価するために重要である。しかし、鳥類の繁殖時期を記録するには多数の巣を定期的に見回って繁殖状況を記録する調査が必要であり、これには大きな調査上のコストが伴う。リュウキュウコノハズク(Otus elegans)の長期的な研究においてこの問題を解決するために、本研究は繁殖時期の指標である孵化日の簡易的な推定方法を開発することを目的とした。2021年から2024年にかけて、波照間島で野外調査を行った。確実な孵化日が記録できた5羽のヒナと201羽の成鳥から形態計測値データ(体重、跗蹠長、翼長)を収集し、成長曲線を推定した。その結果、8日齢から9日齢までは、体重と跗蹠長の成長速度が翼長の成長速度を相対的に上回っており、それ以降はこの関係が逆転することがわかった。またこの5羽のヒナの成長に伴う外見や行動の変化の記録から、8日齢から9日齢のあたりで体全体に茶色の幼羽が見られるようになることも明かになった。これらの結果に基づき、波照間島のリュウキュウコノハズクについて孵化日を推定する方法として以下の手順を提案した。1)ヒナの体全体で白い羽の下に茶色の幼羽が見えるかを確認する。2)茶色の幼羽が体全体に見られない場合は、跗蹠長の成長曲線に基づいて日齢を推定する。茶色の幼羽が体全体に見られる場合は、翼長の成長曲線に基づいて日齢を推定する。3)形態計測の実施日から日齢を差し引き、推定孵化日とする。これらの手順により、リュウキュウコノハズクの繁殖期の数か月間にわたって島に滞在して定期的に巣を見回らなくとも、育雛期の間の数日間に島を訪れて各巣でヒナを1回測定するだけで、孵化日、すなわち繁殖時期を推定することが可能になった。