表題番号:2024C-545 日付:2025/03/18
研究課題日本の諸都市における社会空間構造に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 助教 平原 幸輝
研究成果概要
 2024年度においては「日本の諸都市における社会空間構造に関する研究」と題して、日本の大都市や地方都市の社会空間構造を捉える試みを行ってきた。
 大都市に関する研究としては、東京都世田谷区を対象とした分析を行った。その結果、都心に近いエリアに単独世帯や若年層が多く、彼らの流入が多い状況が続いていることなどが確認された。こうした知見については、せたがや自治政策研究所の『せたがや自治政策』において論文として発表した。
 また、所得階層の観点から東京圏の社会空間構造を捉えた上で、その帰結についても分析を行った。その結果、所得格差が拡大した地域ほど、所得格差に対する認識の近い政党の中で、与党から野党に得票が流れている可能性が示唆された。こうした知見については、関東社会学会の『年報社会学論集』において査読付論文として発表した。
 地方都市に関する研究としては、岩手県陸前高田市を対象とした分析を行った。その結果、東日本大震災後の復興の過程において、被災エリアを踏まえて人々の居住エリアが形成されてきた構造や、若年層がその復興の担い手となった可能性が指摘され、そうした知見をいかに能登半島地震による被災に生かすかといったことが検討された。こうした知見については、日本都市計画学会の『都市計画』において論文として発表した。
 また、岩手県盛岡市を対象とした分析も行った。その結果、経済的合理性が浸透し、同心円構造の明確化が進んできたことが東京圏を対象とした分析では確認されてきたが、地方都市においてはそうした変化は生じていないことや、人口減少が進む中で、ホワイトカラーが多いという特徴を持った居住エリアが縮小するなど、これまで形成されてきた空間構造に変化が生じていることが確認された。こうした知見については、日本都市計画学会の『都市計画報告集』において報告を行った。