表題番号:2024C-544 日付:2025/04/03
研究課題原始ペプチドからタンパク質への進化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 講師 八木 創太
研究成果概要

前年度までに得られている結果、「遺伝子発現系に関与する4つの古代タンパク質構造の進化ネットワークの実験的再現」に関する論文を2024718日に国際誌Nature communicationにて発表した。また、本成果は早稲田大学および理化学研究所の共同でプレスリリースもなされた(今は失われたタンパク質構造が解き明かす「RNAポリメラーゼ」と「リボソームタンパク質」の進化的繋がり)。

上記の4つの古代タンパク質構造からなる進化ネットワークの更なる拡張を目指して、前年度までにSH3タンパク質とルブレドキシンの進化的関係性、さらにルブレドキシンが13残基の短いペプチドから再構成できることを発見した。

2024年度では、13残基の短いペプチドと亜鉛イオンとの複合体形成のメカニズムの検証を進めた。円二色性(CD)分散計を用いて、ペプチドに亜鉛イオンを滴定していく過程でのCDスペクトルの変化を測定した。亜鉛イオンを含まない条件では、特定の構造を作らないランダムコイル特有のスペクトルが認められたが、亜鉛イオンを加えていくとCDスペクトルの変化が見られ二次構造形成が確認できた。また、ペプチドの濃度に対して亜鉛イオンの濃度がおよそ半分の時にこの構造変化が完了した。つまり、ランダムコイルのペプチドに亜鉛が結合すると特定の構造形成が行われ、ペプチドと亜鉛がおよそ2:1で複合体形成していることがわかった。また、溶液核磁気共鳴(NMR)でも同様のペプチドに対する亜鉛イオンの滴定実験を行ったところ、同様のペプチド:亜鉛=2:1の複合体形成が確認でき、複合体はしっかりとした3次構造を形成していることも確認できた。これらの結果は、前年度に決定したX線結晶構造解析の結果と一致する結果である。つまり、13残基の短いペプチドでも亜鉛イオンと結合することで、二両たいを形成し、3次構造を形成できることを見出した。