表題番号:2024C-543 日付:2025/04/02
研究課題海鳥類による糞由来窒素供給による沿岸海洋一次生産者のアミノ酸組成変化の測定
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 准教授 風間 健太郎
研究成果概要

 持続可能な社会の構築のためには、人類の生産活動において生態系への負荷を最小とし、かつ様々な生物の生態系機能の効率的な活用が求められている。北海道・利尻島には毎年春から夏にかけてカモメの仲間であるウミネコ数万羽が島内の一か所に集まって集団で繁殖を行う世界最大のウミネコ繁殖地が存在する。ウミネコは、外洋域で餌である魚類から摂取した窒素などの栄養塩類を陸上の集団繁殖地および隣接する磯に糞として大量に供給する。利尻島においてウミネコによる窒素供給がある場所では、ない場所に比べてコンブなどの海藻類の体内窒素含有量が増加し潜在的な生産性が向上することがわかっている。こうした窒素含有量の変化は海藻類のアミノ酸組成や含有量の変化をもたらす可能性があるが、よくわかっていない。本研究では、利尻島においてウミネコの糞に由来する窒素が海藻類のアミノ酸組成を変化させるかどうかを検証した。

 その結果、ウミネコ営巣地に隣接する磯で採集した海藻類の体内アミノ酸含量は、隣接しない磯から採集した海藻類に比べて高かった。本研究の結果は、海鳥による外洋由来栄養塩類の供給が沿岸域食料生産に寄与するだけでなく、食品機能も向上させうることを示唆する。