表題番号:2024C-541
日付:2025/02/04
研究課題放射性セシウム高蓄積真菌の解析
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 人間科学学術院 人間科学部 | 教授 | 赤沼 哲史 |
(連携研究者) | 人間科学研究科 | 修士2年 | 堀尾優子 |
- 研究成果概要
- 2011年3月11日の東北大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故により大量の放射性物質が放出されたが、特に、半減期が約30年と長く放出量も多かった放射性セシウム137(Cs137)の回収は現在も残る大きな課題である。これまでも、微生物を利用したCs137の回収方法が検討されてきたが、十分な成果は得られていない。本研究室では、偶然Cs137を高蓄積している微生物叢を発見したので、この微生物叢から菌株を単離・同定し、Cs137回収に有効であるか検討した。
昨年度までに、放射性物質汚染水に繁茂しCs137を高蓄積していた微生物叢から、黒色糸状菌FW001-Aおよび黄色糸状菌FW001-Bを単離したが、本年度には、DNA解析によりA株はCadophora属、B株はCosmospora属と同定した。また、両株とも学名がつけられていない新種の可能性が高い。この2株がセシウム蓄積能力を持つのか検討するため、Cs137を含む液体培地にて両株を約1ヶ月間培養し、経時的に液体培地中の残存Cs137濃度を測定した。A株では3日目で約70%、7日目で約80%のCs137濃度の減少が確認され、1ヶ月が経過してもCs137が再放出されなかった。B株も、3日目に培地中の残存Cs137濃度が約40%減少し、1ヶ月後には70%以上Cs137濃度が減少した。
以上の結果から、両株ともセシウム蓄積能力を持つことが示され、液体培地中のCs137は両菌体に蓄積されたまま、少なくとも1ヶ月間は保持可能であることが分かった。このことから、今後の研究の発展によって、水中のCs137の回収に有用な微生物であることが示された。