表題番号:2024C-537
日付:2025/03/11
研究課題イマヌエル・カント『純粋理性批判』における因果性理論の研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 社会科学総合学術院 社会科学部 | 教授 | 千葉 清史 |
- 研究成果概要
- 本研究では、まず、『純粋理性批判』「第二類推」の内在的読解に取り組んだ。客観的時間規定(因果性概念についてはとりわけ客観的時間継起)が可能であるためには、因果性概念の適用が必要である、というカントの議論の各ステップを可能な限り明瞭化し、その内実・妥当性について検討した。やはり、一連の論証において、「客観的時間継起を可能にする概念は因果性しかない」という部分には、除去しがたい問題があることが確認された。
また、カントの議論を検討するにあたって、本年度の研究ではとりわけ、Steven Bayne, Kant on Causation (2003)、ならびにEric Watkins, Kant and the Metaphysics of Causality (2004)を参考にした。両者とも、その特徴は、以前の解釈に比して、カントの議論の形而上学的側面を重要視していることである。両者から学んだことは多くあるが、特に重要な成果として、カントの因果性概念は原因タイプと結果タイプの出来事の「必然的継起」に尽くされるものではなく、何らかの仕方で「力」の概念にコミットするものである(その点で、カントの因果性概念はデイヴィッド・ヒュームのそれとは異なる)、という点が重要となるであろうことを確認したことが挙げられる。
ただ、「力」についての言及はカントの議論において見出されるとはいえ、それがカントの論証にどのように有機的に組み込まれうるかについては、まだ十分な答えが得られなかった。そのために本研究では、現代の因果性研究を参考にしつつ、カントの議論を再構成する研究を開始したが、時間の都合により、これについてはまだ十分に展開的なかった。この方針での研究は、今後も継続する予定である。