表題番号:2024C-533 日付:2025/04/03
研究課題事業承継における高齢化と資源配分の非効率性の関係
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 教授 及川 浩希
(連携研究者) 商学学術院 教授 宮川大介
(連携研究者) 政治経済学術院 教授 上田晃三
研究成果概要
日本では少子高齢化の進展に伴い、後継者不足による事業承継の断絶が問題となっている。本研究は、事業承継の失敗がマクロ経済にどのような影響を与えるのか、定性的・定量的な分析を行うことを目的としている。研究は三つの部分からなる。第一に、企業レベルの財務データと経営者交代の情報を用いて、事業承継がミクロレベルでどのような影響を持つかを検証した。これにより、前任者・後継者の年齢構造と、交代時の企業パフォーマンスに、いくつかの典型的なパターンを見出した。次に、実証分析の結果をベースに、経営者交代を内生的に取り扱うマクロ経済モデルを構築した。主要な仮定は、経営者としての能力が年齢に応じて変化すること、そして、各企業は経営者の能力とは別の企業固有の生産性がある、ということである。前者は、人口動態が企業パフォーマンスに影響する経路を生み出し、後者は、事業承継を通じた資源のミスアロケーション(高生産性企業の承継失敗・低生産性企業の継続)を描写するのに有効である。これまでのところ、理論モデルの拡張および精緻化に時間を割いており、モデルのシミュレーションを用いた定量分析は単純な形でしか行っていないが、研究の第三段階では、このマクロ経済モデルを日本経済にカリブレートした上で政策実験を行う予定である。